Contents
ブラックロック HDVとは
モーニングスター配当フォーカス指数のパフォーマンスへの連動を目指した、米国高配当株に投資するのに適したETFです。
バンガードのVYMと比べると、比較的分散の度合いが弱く、より高配当ETFとしての志向が強くなっています。
低コストでインデックスへの追従を実現した、パッシブ投資向けのETFです。
保有上位銘柄
Exxon Mobil(8.09%)、AT&T(7.14%)、Verizon(6.02%)、Johnson&Jonson(5.76%)、Chevron(5.66%)と続きます。トップ5を見ると、エネルギー株と電気通信株がかなり大きな割合となっていますね。構成株式銘柄数は73社と、同じ高配当株に投資するVYMとくらべて、偏りが大きくなっています。
セクター別の構成比率
生活必需品がトップの21.20%、エネルギー16.38%、ヘルスケア14.33%、電気通信13.16%と続きます。生活必需品、ヘルスケアとディフェンシブなセクターの比率が高くなっています。
電気通信もAT&TとVerizonの2社のみですが、全体の比率としてはかなり大きいですね。
経費率
経費率は0.08%です。低経費率といえばバンガード社ですが、このETFに関してはブラックロック社も負けじと超優秀な低コストです。
類似ETFとの比較
同じ高配当銘柄に投資を行う類似ETFとしては、バンガード社から出ているVYMという類似ETFがあります。
また、配当に注目しているという意味であげられるのが、バンガードから出ている増配企業に投資を行うVIGというETFです。
さっそく重要と思われるデータを比較しています。
基本データ
ティッカー | 経費率 | 組入銘柄数 | 平均出来高 | 分配利回り |
---|---|---|---|---|
VYM | 0.08% | 428 | 722,655 | 2.91% |
HDV | 0.08% | 74 | 310,484 | 3.31% |
VIG | 0.08% | 188 | 556,519 | 2.06% |
期間毎の年間リターン(配当込み)
ティッカー | 3年 | 5年 | 10年 |
---|---|---|---|
VYM | 8.83% | 12.92% | 7.53% |
HDV | 7.4% | 10.55% | – |
VIG | 8.66% | 11.89% | 7.63% |
経費率は完全に横並びですね。
分散度合いはやはりバンガード商品が高く、平均出来高についてはどれも問題がない水準です。
こうしてみると、HDVに関しては分配利回りが高い反面、リターンが低くなっている印象がありますが、この意味を考えるには構成セクターを比較してみる必要があります。
上位セクター構成比率の比較
VYM | HDV | VIG | |
---|---|---|---|
1位 | 消費財 | 生活必需品 | 資本財 |
構成比率 | 14.9% | 21.40% | 31.4% |
2位 | テクノロジー | エネルギー | 消費者サービス |
構成比率 | 14.3% | 16.30% | 15.9% |
3位 | 金融 | ヘルスケア | 消費財 |
構成比率 | 13.7% | 14.16% | 14.3% |
こうしてみると、それぞれの構成比がまったく異なっているのがわかります。
バンガード社とブラックロック社で分類の方法に違いがある点には注意が必要ですが、例えばHDVの16.3%をエネルギーが占めるのに対して、VYMのエネルギー構成比は9.3%です。エネルギー株は中期的に低迷しているため、これがHDVのリターンを押し下げると同時に割安となり、分配利回りを上昇させていたわけですね。
また、VYMでは金融が13.7%と第3位の割合を占めていますが、HDVでは1.11%とほとんど含まれていません。
実は、HDVの上位3種のセクターは、どれもシーゲル教授のセクター別投資戦略において推奨されているセクターであり、これ単体でシーゲル流投資をある程度実現することのできるETFだと考えることができます。
ただし、当サイトのポートフォリオにおいては他にすでにVDC、VHTを採用しているため、同じセクターばかりに投資しているのではセクター分散になりません。この観点から、幅広いセクターに分散した高配当投資のできるVYMを当サイトでは採用しています。
もし読者の方が他にVDCやVHTを保有する予定のない方であれば、生活必需品、ヘルスケアセクターを多分に含み、ディフェンシブ色の強いHDVを推奨したいと思います。
シーゲル教授の研究成果
1ドルの利益は配当として支払われるほうが、剰余金に回されるよりも価値があると最初に主張したのはグラハムとトッドでした。
その後、1978年にクリシュナ・ラマスワミーとロバート・リッツェンバーガーによって配当利回りと最終的な投資利回りに強い相関があることを示しました。
また最近でも、1951年~1996年の期間中、ジョームズ・オショネシーによって大型株配当利回り上位50社の利回りが大型株全体を1.7%上回ったことが明らかにされています。
シーゲル教授も実際にS&P500構成銘柄を対象に調査を行いました。次のグラフがその結果です。
驚くべきことに、綺麗に配当利回りの高い株のリターンが高くなっています。
次の図では、リターンに加えて標準偏差、ベータもみることができます。
特筆すべきこととして、標準偏差とベータがもっとも低くなっているのは、2番目に配当利回りが高かったグループでした。
配当の低い株は、リターンが低い上にリスクも高くなっているので注意しなければなりません。
この結果は割安株についての調査結果に似た結果になっています。
市場平均との比較
VYMの設定日は2011年3月29です。ブラックロックの資料では、設定来からのトータルリターン(年)は12.01%となっています。
さっそくS&Pのトータルリターンとくらべてみましょう。
1年 | 3年 | 5年 | |
---|---|---|---|
HDV | 4.66% | 7.04% | 10.73% |
S&P500TR | 4.73% | 7.15% | 10.97% |
近年のトータルリターンをみると、僅かに市場平均をアンダーパフォームしているようです。
もっとも大きな要因となっているのは、高配当株として大きな構成比を占めている石油株の低迷でしょう。
逆にいえば、原油価格が回復すれば一気に市場平均を追い越す可能性があるといえます。
当サイトのHDV評価
総合評価
期待リターン | ★★★★★ |
---|---|
リスクの低さ | ★★★★☆ |
経費コスト | ★★★★★ |
将来予測 | ★★★☆☆ |
おすすめ度 | ★★★★★ |
評価理由
HDVは、1本でシーゲル流投資を実現できる優れたETFです。
当サイトのポートフォリオは組み入れていませんが、当サイトではセクターの過剰な偏りを防ぐためにVYMを採用しているためです。
ETFを買う時には、単体のリスク/リターン以外でも、ポートフォリオ全体としてバランスが取れているかを考える必要があります。
構成セクターの魅力
HDVは、高配当な株式を集めたETFですが、実はそのセクター別構成比をみると、生活必需品、エネルギー、ヘルスケアと優秀なセクターが上位を占めており、高配当かつ優良セクターが詰まったハイブリッドな魅力のあるETFであることがわかります。
ディフェンシブなセクターは景気後退期の下落幅も限定的であり、歴史的にみても高いリターンを期待することができます。
懸念される点は、原油安によるエネルギーセクターの低迷がいつまで続くかです。
エクソンモービルとシェブロンは高配当エネルギー株として規模も大きいため、このETFのリターンを左右する要因となります。
低コストで採掘できるシェールガスが減ってきているため、徐々に原油価格も回復してくるだろうと一部では予想もされていますが、OPEC側との半政治的な駆け引きもあり、予測が難しいところです。
また、最近ではAmazonのホールマート買収による生活必需品セクターへの打撃も記憶に新しいところです。インターネット企業による生活基盤の侵蝕のほかにも、プライベートブランドによる商品の競争激化なども気になる要因になっています。
高配当の魅力
僕たちがある企業の経営状態を見極めるには、財務諸表と向き合わなければなりません。
ところが、会計上のテクニックなどによって損益はある程度コントロールされるため、財務諸表上は健全でも、実は潜在的な負債を抱えている会社なども存在します。
企業の株価というのは、将来に支払われる配当すべての合計を現在価値で割り引いた価格が根拠となっているわけですが、見えない負債を抱えていて将来配当が期待できないであろう会社の価格は、市場では過剰に評価されたりもするわけです。
この意味において、配当による確定利益というのは一種の保険として機能します。
実際に存在しないかもしれない帳簿上のお金よりも、現実のお金に価値があるがゆえに、このETFには魅力があるといえます。
また、すでに資産が十分にある方で、配当で暮らしていきたいと考えている人にとっても素晴らしい投資対象になり得ます。
必要なだけのお金を自分で売り買いしながら作っていくのは少々面倒ですし、およそ一定の割合で支払われるこちらのETFなら収支の計算も立ちやすいでしょう。
ただし、このETFにはデメリットがあることも理解しておかなければなりません。
配当金での利益確定は、後伸ばしにできたはずの税金を払わなければならない点、また配当で支払われたお金を再投資するまでにタイムロスが存在する点、この2点から複利効果を失いやすいのは大きなデメリットといえます。
高配当株については、確かにハイリターンが期待できる結果が過去に出ていますが、理論上は配当というのは株主にとってニュートラルなものであり、むしろ税制上は損をするはずだということは覚えておきましょう。
HDVは、お手軽にシーゲル流ポートフォリオを作る際にはかなりオススメできるETFです。
ただし当サイトとして推奨できる割合は、多くても50%までくらいでしょうか。
分散の度合いは低めのETFなので、その点だけ注意するようにしてください。
はじめまして。
現在、ポートフォリオを構築に当たり迷いが有ります。
ご教示頂けたら幸いです。
アクティブファンドとETFの組み合わせで構築中です。
内訳は、セゾン投信の達人ファンド40%、DHS25%、QQQ25%、CURE10%で考えています。
達人ファンドなど既に10年以上前から投資している物はなるべくそれを活かす形で考えた為この様になり、相関係数など数理的処理より、好き嫌いよく言えばアートとしての側面を重視したポートフォリオにしました。
長く継続するには好きになれることが重要だからです。
問題はDHSにあります。。
シーゲル教授のスマートベータ活用のはず、がデーター的に類似性のあるETFに劣後していると言う数字が出てきます。
そこでrokohouseさんならDHSの代わりにここに何を入れるか、或いはDHSのままで良いのかアドバイス頂けたら幸いです。
DHSは非常に優れたコンセプトのETFで、経費率の問題なのか、統計的に有意な運用期間がまだ無いためなのか、劣後している理由をどう考えるべきかご教示頂けたら幸いです。