米株式投資家のバイブルといえば、言わずと知れたシーゲル教授の「株式投資の未来」です。この本は2005年に出版されていますので、もう出版されてから10年以上が経過していることになります。
シーゲル教授の過去の分析結果の業績は偉大なものですが、これが未来に渡って永続するのかはわかりません。あらゆるアノマリーは、そのアノマリーの存在が知られるにつれ弱まっていく可能性があります。
いまとなっては「スマートベータ」としてもよく知られる通り、セクター毎に分散投資を実現するようなETFも増え、これらの中にもシーゲル教授の本の影響を受けているであろうものがたくさんあります。シーゲル派の投資家は、シーゲル流のポートフォリオを構築しつつも、過去の相場の偏りが現在も続いているのかを注視していく必要があります。
そこで、今年の1月に作成した「株式投資の未来」出版後のそれぞれのETFの分析結果をご紹介したいと思います。
「株式投資の未来」出版後の推移は?
データをお見せする前に、お断りしていくことがいくつかあります。
これは、僕が自作のExcelで米Yahoo Finance APIからヒストリカルデータを取得して作成した資料です。実は今年の5月くらいに、APIが停止されてしまい、最新のデータを取ることができなくなりました。よって、昨年末までのデータとなっていますが、ちょうど「株式投資の未来」出版後の2006~2016までのデータを使用しているので、シーゲル流の成果を振り返るには優れた資料だと思います。それぞれの年の12月のデータが使用されています。
この期間内には2008年にサブプライム・ショックも挟まれていて、株価の暴落をまたいだデータとしても有用です。参考までに、それぞれのETFが2008年にどれだけ下落をしたのかも掲載しておきます。
また、こちらのデータは株価から計算されているため、配当が含まれていません。そのため、配当を含めると平均で2%ほどはこれよりも良い収益となるはずです。
ETF名 | 2006年12月
株価 |
2016年12月
株価 |
年成長率
(CAGR) |
2008年下落幅 |
VTI(米分散) | 57.39 | 115.32 | 7.2% | -37% |
VWO(新興国分散) | 29.94 | 35.78 | 1.8% | -52% |
VDC(米生活必需品) | 50.62 | 133.99 | 10.2% | -17% |
VHT(米ヘルスケア) | 49.21 | 126.77 | 9.9% | -23% |
VDE(米エネルギー) | 72.29 | 104.68 | 3.8% | -40% |
VGT(米IT) | 48.46 | 121.50 | 9.6% | -43% |
VBR(米小型バリュー) | 57.19 | 121.00 | 7.8% | -32% |
VYM(米高配当) | 37.99 | 75.77 | 7.1% | -32% |
いかがでしょうか?
実は、シーゲル教授が本を出版してからの10年間、原油価格の影響を受けて低迷を続けたエネルギー株以外において、ほとんどその予言通りに株価は推移してきたのです。アメリカ株の平均はおおよそVTIの推移で見ることができるので、これを基準にアウトパフォームしてるかを参照するのが良いでしょう。
特に目を見張るのが生活必需品、ヘルスケアといったディフェンシブ株の成績で、突出したリターンを出しながらも2008年、サブプライム・ショックの影響も相対的に小さく、安定して上昇し続けてきました。VYMは0.1%だけVTIよりも低い数値になっていますが、VYMは配当金が大きくなっているので実際にはアウトパフォームしています。
逆に、シーゲル教授が成長の罠という言葉で警笛を鳴らしていた新興株投資は年1.8%の上昇とまったく奮っていません。
僕がシーゲル流のETF以外で注目しているのはやはりVGTです。IT株はやはりバブルになりやすく、話題のグロース株を追いかけるような投資方法は危険であるという認識はありますが、僕たちのインフラとして生活必需品になりつつあります。バフェットがアップルに投資をはじめたのも、すでにiPhoneは生活必需品としての地位を獲得しているといった話をされていました。VGTに関しては、この先投資を考えてもいいかなと思っています。
継続するシーゲルのアノマリー
シーゲル流の投資でもっともよくある批判は、過去の傾向が未来に渡っても続くとは限らない、といったものです。これはもちろん正しいのですが、現状の推移をきちんと分析してみれば、株式投資の未来出版前の世界において法則化されていたものは、以後の世界においても継続しており、現状ではシーゲル流投資を否定する材料は見つからないと思います。
僕は、素人の勘よりも根拠に基づいた投資を重視しているので、今後もシーゲル流ETFの動向を注視しつつ、買い増しを続けていく予定です。
当サイト推奨のポートフォリオは、上記の推移や、他のETFの推移なども前提のデータとして取り入れていますのでよろしければご参照ください。
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