レバレッジETFに寄せられる批判として一番多いのは、「レバレッジETFはボックス相場に弱く長期的には減価する」というものです。
もちろんレバレッジETFを保有して、相場が上下を繰り返したときに指標よりも減価することは僕は知っています。
しかし、もうちょっと原理的に考えてみましょう。
S&P500は長期的な傾向として、年8.8%ほど上昇することがわかっています。
ということは、これを1日あたりに直せば何%かは計算しませんけどやはりプラスのリターンがあることになります。
レバレッジETFが毎日S&P500の3倍の変動幅を実現すると仮定すれば、1日あたりのレバレッジETFの期待値はS&P500の1日あたりリターンの3倍に決まってますよね?
だから、レバレッジETF最強じゃね?って考えを抱くのは数学的な直感としてある種当たり前なことでもあるわけですね。
レバレッジETFとダブルアップ
まず、レバレッジETFの内部でどのようなリバランスを行っているかについてはこちらの記事を参照してください。
勝った時に投資額が増えて、負けた時に投資額が減るというのは実はレバレッジETFの特徴というよりも、複利そのものの特徴でもあるわけですけども、まあとりあえずこれがレバレッジETFのリスクを高めているわけです。
例えば、ポーカーマシンのダブルアップ(勝つと賭け金が倍、負けるとゼロ)を想像してください。
このダブルアップは株式投資を模しているため、50%よりも少しだけ勝率が高いものとします。
この時、期待値としては常にダブルアップをするのが正解ですが、ずっとダブルアップをしていたらいつかきっと負けますよね?
つまりレバレッジETFをそのまま持ち続けるということは、ダブルアップによって勝った報酬をそのまままた次のダブルアップに回すという作業を毎日していることに等しいのであり、期待値ではなくリスクという観点からここに問題があるわけです。
でも、考えてみてください。
あなたが資産100をレバレッジETFに投資し、その日の終値で資産価値が150になったとします。
ここであなたは資産50を売り払って利確し、残りの資産100をそのまま次の日の投資に回したとします。
このとき、あなたはすでに安全な資産50を手にしており、別に次の日のリスクを高めずに高い期待値の投資を続けることができますよね?
これを抽象的に行っているのが可変式レバレッジド・ポートフォリオのシステムです。
定期的にリバランスを実施し、勝ったときはリスクの高い資産であるSPXLからリスクの低い資産であるBNDに資産を移動させることによって、無限ダブルアップ地獄であるレバレッジETFのリスクを軽減します。
逆に負けた時はリスクの低い資産であるBNDからリスクの高い資産であるSPXLに資産を移動させることによって、一定の回復力を取り戻します(レバレッジETFは内部的には負けたときには「損切り」をするため、そのまま負け続ける確率が高くなります)。
レバレッジETFというのは究極の順張り投資法なわけですが、リバランスは逆張りの性質を持つためボックス相場に強く、両者を組み合わせることによってリスクを減らし、レバレッジETFによる高い期待値を抽出しようという戦略なわけですね。
レバレッジETFをそのまま持ち続けることがダブルアップをし続けるようなギャンブルに近いとしても、部分的に勝ちを確定して賭け金をコントロールすることによって、リスクをコントロールすることは可能なはずです。
つまり、レバレッジETF1枚あたりの資産価額の推移がリスキーであるなら、レバレッジETFの所持量自体をコントロールすればいいわけですよ。
100×3も150×2も同じ300なんですから。
もちろん手数料などとの兼ね合いもあり、常にリバランスを行うわけにはいかないので、その頻度が3ヶ月に1回で十分なのかといった細かな議論は残されていますが、「レバレッジETFはボックス相場で減価するからダメ」というような単純な話で否定できる問題ではないということです。
レバレッジETFへの疑念
つまり僕は、レバレッジETFが「あくまで1日の変動幅の3倍の投資効果を実現するもので、長期では指標から乖離する」ことそのものはあまり本質的な問題ないのではないか、と考えています。
それよりも僕がこのレバレッジETFについて疑念を持っているのは、
- レバレッジETFは本当に1日の指標の変動幅の3倍をコンスタントに実現するのか?
- レバレッジETFというのはサスティナブルな仕組みなのか?
- レバレッジETFは資本主義を破壊しないのか?
といったようなもっと根本的な問いです。
レバレッジETFは本当に問題のないシステムなのでしょうか。
資本主義というのは再帰的にレバレッジが働いてるシステムです。
例えば僕たちが株式投資をしている会社は通常、借金をしてレバレッジをかけて商売をしています。
そこに僕たちが、借金をしたお金で投資をすることも可能です。
レバレッジETFを通せば、借金をしたお金でレバレッジETFを購入して、借金をしながら経営する会社に投資することができます(直接のキャッシュフローとしてはこうはなりませんが)。
レバレッジETFのような商品は資本主義システム全体のレバレッジを加速させることになるため、何だか嫌な予感がすることは事実であり、僕はそういうレベルでの猜疑心をレバレッジETFに対して抱いている、ということです。
まあしかし、過去のレバレッジETFの推移を見る限りは今のところ順調であるようにみえるし、僕はとりあえずスモールスタートで全資産のうち一部分を割き、採用していくことに決めた、ということですね。
初めまして、いつも楽しくブログ拝見しています。SECでも同様の懸念がなされていますね。今後ETF自体の認可が取り消される可能性もあるのでしょうか。ポートフォリオとしてはほぼ完ぺきに近いと感じますが、ここの一点が気がかりです。もし、お時間あるときにでも記事として取り上げて頂ければ助かります。
http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2016/2016spr05web.pdf
その規制案については存じ上げていますが、昨年SECは規制するどころか初めて4倍レバレッジを実現するファンドを承認し、実質的にレバレッジ商品の規制案は死んだと言われています。
https://www.reuters.com/article/bc-finreg-leveraged-etf/sec-sends-contradictory-compliance-message-in-approving-4x-leveraged-etfs-idUSKCN18E2TB
ただし、この記事にもあります通り、僕はレバレッジ商品が市場に何か悪影響を与える可能性は否定できないと思いますし、将来のことについてはわからないと回答するしかありません。
規制される可能性もあるしされない可能性もあるでしょう。
その上で申し上げますが、多くの人はETFが償還されてしまうことを大きなリスクだと捉えているようですが、僕は償還されたらされたで別のポートフォリオを組めばいいとしか思っていません。
その時の時価で換金するだけですから、せいぜいNISA口座にいれていた場合はNISA枠が無駄になるくらいの話でしょうか。
アドセンスが復活しないのであまり記事を書く気がおきませんが、そのうち気が向いたらそのへんの考えもまとめたいと思います。