中国テンセント(騰訊)の勢いがとまりません。
11月22日、テンセントの時価総額はついにフェイスブックを追い抜き、アップル、グーグル、マイクロソフト、アマゾンに次いで5位にランクインしました。
僕はこれを複雑な想いでながめています。
アジアで初めて時価総額が5000億ドルを超えた企業が誕生したという事実はめでたいことかもしれませんが、それ以上に重たい何かを意味しているように感じられるからです。
先に言っておくと、僕は中国が嫌いなわけではないし、別に日本の企業が入っていないことが悲しいわけではありません。
テンセントとはどんな企業か?
テンセントは、僕個人にとってはとても馴染みのある企業でした。
アメリカに在学していたこともあり中国人の友達も数多くいたのですが、彼らはみんな同じインスタントメッセンジャーを利用していたからです。
このメッセンジャーは騰訊QQと呼ばれており、中国人の間ではこれがITインフラの重要な基盤となっていました。
音楽・動画の再生や配信、ゲームやSNSなど、あらゆるインターネットサービスを騰訊QQを通して利用するため、僕も友達に要求されてPCにQQをインストールさせられたくらいです。笑
また最近ではゲームの世界でも勢力を拡大しており、5v5の大人気ストラテジゲームLeague of Legendを運営するRiotや、スマホで気軽にプレイできてかつ戦略性の高いクラッシュ・ロワイヤルを運営するSupercellなどの株式を取得しています。
これらのゲームはとても競技性が高く、僕もゲーマーとしてファンの1人でした。
テンセントは人工知能の研究開発にも力をいれており、コンピュータ囲碁においても高い成績を残しています。
要は、中国のITをまとめて牛耳ってるような超巨大企業です。
中国のITの特殊性
しかし、中国のITが発展してきた背景について書かないわけにはいきません。
中国では、FacebookやTwitter、YoutubeやGoogleの検索エンジンまで、これら全てのサービスが国の規制によって使えません。
日本人はよく自分の国の独自システムをガラパゴスと呼んで揶揄しますが、中国のIT企業はそれ以上にガラパゴスな環境で生育してきたのです。
この中国の姿勢は、僕が好きだったインターネット文化的な思想である、カリフォルニアン・イデオロギーと完全に対立します。
僕がいくつかの言葉でこの思想をまとめると、「自由・開放・分散」です。
これらの言葉は相互に関連しているため、「自由」の一語にまとめることもできますが、それぞれが重要な原理を表しています。
まず自由とは例えば表現の自由に代表され、その言論活動などを国家に拘束されることなく行うことができる、ということです。
開放はよく日本語でもオープンと表現しますが、情報などがあらゆる階層の人間に開かれているということです。エンジニア達の世界では、ソースコードをお互いに開放し(オープンソース)、個人の力を結集して新しいサービスを作るといったような文化があります。みえる化とか多様性という言葉も近い意味合いがあるでしょう。
最後の分散とは、集中管理されていない、分散型のネットワークを是としているということです。
僕の感覚では、これらの理想を体現した会社がグーグルでした。
だから、僕のポートフィリオのごく一部では、単に好きだからという理由でグーグルの株式を保有しています。
もちろん全体の運用成績には影響しないような量の話ですが、愛ゆえの保有です。
でも、要は中国というのはこれと真逆の思想によってITを発展させてきたんですね。
グレートファイアウォールによる徹底的な情報統制、海外のサービスの排除、共産党による一党独裁体制ですから。
だから、こういう国のITがこれだけ伸びているとなると、僕らの信じていた価値観はなんだったのかということになってくるわけですよ。
世界の潮流とテンセント
こうした異質な文化から生まれたテンセントという企業の台頭は、世界の潮流の変化を象徴的にあらわしているのではないかと思います。
自由を掲げる民主主義国家はどこもまともな意思決定を行えずに凋落していく一方、機能不全に陥る一方で中国のような独裁国家は成長を続けているわけです。
アメリカではメキシコ国境に壁をつくると公言していたトランプが大統領となり、イギリスはEUを離脱し、他のヨーロッパ諸国でも極右政党が力をつけてきています。
数年前までよくあった、「中国は破綻寸前」「Facebookも使えない国」「選挙権すら与えられてない国」のように中国をバカにするような論調もすっかり息を潜めたように思います。
なんだか僕も民主主義って本当に大丈夫なんだろうかみたいな気分になっていますが、どうなんでしょうかね。
中国のように少数のエリートたちに統制された国家のほうがいいんじゃないかという意見が増えていくような気もしていますが。
投資判断とは別です
テンセントがスゴイ企業であるという話をしましたが、これは僕の投資判断とは別で、今のところテンセントを買うつもりはありません。
歴史的にはこうした大人気グロース株への投資がそれほど大きなリターンをあげていないことはシーゲル教授が証明しているわけですし、PERは50を超えており、テンセントがそれだけ優秀な企業であることはすでに期待として織り込まれているからです。
僕はITセクターへの投資については実はけっこうポジティヴなのですが、それならVGTなどのセクター全体への分散投資がおすすめです。
もっとも、ブログ村では上昇相場ではグロースに集中投資すべきということになっているらしく、いつ暴落があるか誰にもわからない中で暴落時に大きな打撃を受けるセクターに何の確信があって投資してるのか僕にはよくわかりませんが、当サイトの読者には単に長期的に期待が持てるポートフォリオを維持し続けるスタイルをオススメしたいですね。
勘で今はこっちのセクター、今はこっちのセクターとかやってる人は無駄に手数料と税金の先払いをしているだけで長期的にリターンを押し下げることになるでしょう。
買い足す時に比較的割安な国やセクターを選んでおくか、くらいにとどめておくのがよろしいかと思います。
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