ROKOHOUSEは、平日は硬め(投資理論とか)、休日は柔らかめ(人生論とか)の記事を更新することが多いです。
特に深い意図があるわけではなく、休みの日くらいリラックスした記事にしようかな、くらいの気持ちですが。
今日は前回の続編的な位置づけで、割と真面目な記事です。
また、今日の記事を読むにはある程度の前提知識が必要ですので、まずはこちらからお読みください。
前提知識のまとめ
さて、僕がこれまで当サイトにてご説明してきたことから、配当金の性質と高配当株についてのシーゲル教授の見解をまとめてみます。
- 本質的に配当金(インカムゲイン)と売買差益(キャピタルゲイン)は同質のものであり配当金が出れば株主が得をするわけではない。
- 配当金が出ることで、本来先延ばしにすることができていた税金の支払いをしなければならないため、高配当株は税制上は不利である。
- しかし税制上の不利を受ける一方で、高配当株を配当を再投資しながら運用したときのリターンは市場平均よりも歴史的に優れていた。
- これは配当金が目に見えるお金として株主に支払われ、高額な役員報酬や無駄な設備投資などに回されたり、株主にとって見えにくい財務上の含み損等を抱えているリスクが低くなることが一つの要因として考えられる。
ここまではいいでしょうか?
自社株買いの増加傾向をどのように考えるか
ここで問題なのは、アメリカ企業は配当として株主に利益を還元するよりも、自社株買いを通じて株主に利益を還元するケースが増えてきている、という点です。
シーゲル教授の配当の大きさを重視すべき理由によれば、配当金がキャッシュで支払われることではなく、株主にお金が還元されることが重要なのですから、自社株買いよりも配当を重視すべき理由はそれほどないはずです。
アメリカでもキャピタルゲイン税は発生主義ではなく実現主義に基づいて課されるため、配当を支払う代わりに自社株を買い戻し、より多くのキャピタルゲインを生み出そうとする企業が増えました。
その結果、1980年までは5%程度だった配当利回りは2007年には2%程度まで低下しています。
例えば、僕が個人的に好きな企業であるMastercard(MA)もここ数年、配当よりも遥かに大きな額の自社株買いを繰り返しています。
高配当株に限定して銘柄を絞った場合、こうした優良企業は評価されませんよね?
つまり僕が言いたいのは、高配当ではなくて、高総還元性向の企業を集めたETFを購入すべきなのではないか?
ということです。
歴史的なデータの読み方の難しさ
シーゲル教授のデータは長期に渡っていますが、今の環境とは条件が違う部分がありますので注意が必要です。
高配当であることはその企業の還元性向が高いことの十分条件であるのだから良いのだ、という考え方もできます。
しかし、そもそも配当よりも自社株買いのほうが税制上は有利なのだから、わざわざ配当のみを重視する考え方には僕にはやはり違和感があります。
まあ仮に、VYMのような高配当ETFが長期で市場平均を下回ったとしても、いろいろな戦略に分散したポートフォリオを持っていればダメージはわずかです。
特に税制上のハンデもある戦略が高配当株の再投資戦略ですので、あまりに偏りすぎたポートフォリオにするのはオススメできませんね。
一貫性を保つということ
僕はシーゲル流を盲信するのもやめてほしいし、基本はインデックス投資で良いという立場ですので、あえてこういう記事も書いたりはしますが、基本的にはシーゲル流ポートフォリオを一貫して支持しています。
人間はこうして自分の戦略が否定されている記事などをみると考えがすぐに変わってしまう生き物ですが、僕は過去の長期データを参照してそこで成績の良かった戦略に分散して投資を行うというスタイルは(相対的に)有望であると思っていますので、そこはご理解いただければと思います。
先日、Twitterでウォール街で勝つ法則という本を紹介され、いまはこちらを読んでいます。
前から気にはなっていたんですけど、高くて買ってなかったんですよね。
この本はまた違った視点から過去のデータが網羅的に掲載されているので、新しいデータで僕の前提が更新されれば、それに応じて戦略を修正する可能性はありますのであしからず。
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