米国株信仰を批判的に考える&シーゲル批判への返答




本日のテーマは批判的思考(Critical Thinking)を用いたアメリカ株批判です。

なんか日本人って、場の空気とかを重視する人が多いので、物事を批判的に見ること自体が「斜に構えてる」「ひねくれもの」「ノリが悪い」みたいに考える人が多いですが、欧米のディベート文化なんかを参考にして、もっとカジュアルに物事を批判できてもいいと思うんですよね。

ディベートという文化

ディベートってさ、必ずしも物事の絶対的真理を暴くためにやるわけじゃないんですよ。

例えば政治的な話というのは常に価値判断が入り込みますから、「どちらが絶対的にただしい」なんてことはありません。

そんなものが原理的に存在するわけないんですから。

でも、話をしていくうちに自分が前提としていたことを疑いはじめて、結果として自分の考えが変わるということは十分にありえるんです。

だから、あるテーマについてあえて賛成派と否定派の両側に分かれて議論するんですが、このときも別に自分がただしいと思う意見の側につく必要はないわけです。

ディベートというのは、一種のロールプレイなんですね。

経済というのも複合的な視点から最終的に判断をくださなければならないという性質上、本質的にあらゆる批判が可能です。

起こっている現象をどのように切り取るかで、まったく別のことが言えてしまったりもしますからね。

アメリカ株投資を批判する

さて、僕はもちろんアメリカ株が好きな人なんですが、ロールプレイとしてアメリカ株を批判してみましょうか。

株主還元について

まず、アメリカ株投資家が好きな話はアメリカのコーポレート・ガバナンスについてです。

例えば企業の株主還元への意識が高くて軽々しく減配を行わない、というような話です。

でもこれって、長期的にはどうでしょう?

そもそも、業績が死んでる会社が株主優先!とかいって増配を続けまくってたら潰れるに決まってると思いませんか?

業績が悪くなったら配当は減らして業績を回復させるのを第一に考えるのを優先させるべきなのだから、株主の顔色を伺って業績が悪いにも関わらず増配しまくってる会社とか超不健全じゃねともいえますよね。

今回、GEが50%の減配を行ったのを本当に株主たちは批判すべきなのでしょうか?

歴史的なリターン

次によくある話は、アメリカ株のリターンは歴史的にずっと高かったという話です。

でもアメリカよりも歴史的にリターンが高かった国は存在します。

例えば南アフリカ共和国やスウェーデンがそうです。

さらに言えば、日本だって1990年くらいまでのバブル崩壊前までは凄まじい長期リターンをあげてきたんですよ。

当時の人たちは、「日本は歴史的にリターンがいいから日本に投資しとけば間違いない」とか言ってたわけで、米国にだって日本と同じような低迷期がこの先訪れないとは限りません。

過去の統計というのは常に疑ってみる必要があって、そもそも過去のリターンを正規分布に直したようなものを今後も想定するためには、いまのような資本主義社会がこの先もずっと続くことを想定しなければなりません。

歴史は1回しかないのですから、その中の200年なんていうものは僅かな期間であって、統計的確かさを保証するためには実に心細い期間なわけです。

バリュエーションについて

さらに、もし上記のような話を飛び越えてアメリカ株の優越性を仮定したとして、そうしたら投資家はアメリカ株に飛びつくに決まってるんだからアメリカ株のバリュエーションは上昇して結局リターンは低下することになりますよね。

実際、高いバリュエーションのアメリカ株と、低いバリュエーションの日本株というのはつい最近起きていた現実的な出来事でした。

このようなことを考えた上で、アメリカ株S&P500を買っていけばオーケーと無邪気に言い張ることができるでしょうか。

シーゲル流への批判について

最近、米国投資 安全域を保つというブログを書いている小塚さんがシーゲル投資の問題点についての記事を書いてらっしゃいました。

とても論理的でまっとうな批判で、こういう記事が増えるといいなあと思うような内容でしたし、シーゲルの統計データを批判的に読むというのは僕自身も普段から心がけていることです。

僕が最初に「株式投資の未来」を読んで、まず調べたことはその書籍が出版された後のシーゲル銘柄(というよりETF)のリターンでしたし、後ろ向きの統計のみからみた偏りというのは常に疑ってかかる必要があります。

まあ、その点を踏まえた上で作ったのが今のポートフォリオなのですが、実際にシーゲル流のポートフォリオの一つ一つの要素の優位性がどれだけ統計的に確かであるかというのはなかなか難しい話だと思います。

配当貴族銘柄の盲信がヤバい理由

2017年11月16日

しかし、サンプルの不十分さなどから統計的に有意に結論の正しさを判定可能かということと、その結論が誤りであるということも別の話であることも事実であり、現時点でシーゲルよりも網羅的に過去の株式の傾向を分析した人はいないのもまた事実です。

何よりもシーゲルの投資理論というのは「偏り」を主張しておきながら、実はとてもインデックス的な指向性を持っていて、「長期投資」「分散投資」という原理原則に忠実なので、仮に失敗したとしてもダメージが低いんですね。

小塚さんのように理論的な背景があって投資方針を練られている方は良いと思いますが、例えばマンガーが主張するような集中投資の方針などは素人にはほとんど害ばかりなのでオススメしません。

シーゲル流投資を否定派の立場から批判するロールプレイもできるんですが、それでもシーゲル流投資をオススメしているのは別にポジショントークというわけではなく、相対的に優れた投資方法であると思っているからです。

問い合わせなどをみても、当サイトの読者のみなさんは比較的リテラシーの高い方が多いと思っていますが、中にはシーゲルの統計を批判しておきながら、最終的には自分の勘のみに基づいて集中投資をする残念な人みたいなのがよくいるんですよね。

だからブロガーというのは繰り返し、「あたかもそれが唯一の真理であるかのように」、口酸っぱく、同じ主張をしなければならないのですが、そのあたりアイロニー(前提を疑い続ける姿勢)を持ちながらブログを読む癖をつけていただければな、という風に思います。

例えば、あるブロガーがディベートで勝利してるように見えたからその人の言ってることは正しいなどと考えてはいけませんよ。

そんなもん、ディベートが得意なほうが勝つだけのゲームなんですから。

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