ここのところ、Twitterなどで「投資なんて、おやめなさい」と題された本を見かけることがあったので、興味があって読んでみました。
僕、自分の意見と反対な人の本を読むの、けっこう好きなんですよね。
例えば米株ブログばかりを読んでいると、どこのブログを読んでも株をやったほうがいいことになっているし、そこで勧められる本も大抵が楽観的な投資観から書かれた本じゃないですか?
そういうバイアスから開放されて、正しく投資のリスクを理解するためには投資に対して否定的な見方をしている人の本を読むのがいい、と思うわけです。
で、読んでみたんですけど・・・・・。
あまりひどくて、金返せ!!と思いましたね。
手数料が高い投信や生命保険はクソ!みたいな論調はもちろんただしいんですけど、なんかブログより薄っぺらい理屈しかない本でした。
Contents
為替リスクとは何なのかもよくわかっていない
この本の中で出てくる悪役として、生命保険会社の外務員が登場するんですけど、
「万が一、円高になったとしても、海外旅行するとか、もしかしたら海外で暮らすというようなことになれば、ドルでそのまま使えばいいので、為替の影響を受ける心配はありません。」
というような営業トークをしたのだといいます。
つまり円高になったとしても、それは世界的には価値が失われるわけではないから、海外で使うなら問題ないよ、って話をしてるわけですよね。
それが正しいのかはともかく、これに対する著者の反論はこれです。
はっきり言って、日本にある保険会社で加入した「外貨建て生命保険」は、日本でしか引き出せません。日本の生命保険会社にドル建てで加入した保険を、海外で、為替のリスクなしに引き出すことは、基本的にできないのです。たとえ本社が海外にある外資系の保険会社であっても、日本の支社で加入した「ドル建て生命保険」の保険金を、海外の本社に行ってドルで引き出すことはできないのです。
生命保険会社の人が為替の変動リスクについて話をしているときに、なぜか最後に日本円でしか取り出せないことを問題にあげる著者。
いや、両替すればいいだろ???
たぶんこの人、為替リスクというものが何なのかもよくわかってなくて、いかに両替するのが大変かみたいな話をはじめます。
生命保険会社の外務員はこんなちっぽけな両替手数料の話をしてるわけじゃありませんよ。
もうこれを読んだだけで著者がまともな議論のできないタイプだとわかり読むのをやめたくなりましたが、800円くらいで買ってしまったからちゃんと最後まで読みました。
著者がドルコスト平均法に反対する理由
著者はドルコスト平均法には反対のようです。
ちなみに僕もドルコスト平均法には反対です。詳しくはこちら。
でも、以下に引用する通り、この著者がドルコスト平均法に反対する理由は「投資はタイミングが重要なのに平均的に買うのはよくないから」という話らしく、長期投資を勧める金融庁批判をしてみたりと、投資において何が重要なのかをまったくわかってないんですよね。
投資は、安い時に買って値上がりしたら売るから手数料を支払っても儲かるのですが、高かろうが安かろうが決まった日に買ってしまうという、とんでもない買い方をしているのが「ドル・コスト平均法」を使った買い方です。
このサイトでいつもお伝えしている通り、過去の研究からも長期投資における購入タイミングというのは投資結果への影響が小さいことが知られています。
だからこそ、タイミングを無視して機械的に購入を続けるドルコスト平均法に、投資習慣としての合理性(これ以外の合理性は僕はないと思いますが)あるのです。
なぜか最後は投資の代わりにクラウドファンディングが勧められる
挙句の果てに、最後のほうのページで、投資は危ないけどクラウドファンディングはやってみる価値があるみたいな感じで触れられてるんだけど、意味がまったくわかりませんよね。
クラウドファンディングって、投資というよりは応援とか寄付に近くて、リターンを期待してやるものじゃないわけです。
投資はリターンが得られるかわからないからよくないという話を延々としといて最後はクラウドファンディングって・・・。
ほんと残念な本でした。
Amazonのレビューにみる一般人の投資リテラシーの低さ
これだけひどい内容であるにもかかわらず、Amazonのレビューはそこまで低くないんですよね。
普段、米株ブログをやってると読者の方もリテラシーが高い方が多いので勘違いしてしまいがちですが、この本に諭される方というのもけっこういるんですね。
自称経済ジャーナリストのおばちゃんを信じた僕がバカだった。
僕は日本人の書いた本だと山崎元さんの本は好きで、投資家として尊敬していますが、他にいままで日本人が書いた本で良かったと思ったものはほとんどなくて、やはり投資情報は翻訳された海外の本、または英語で探すしかないなと改めて思いました。
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