マモン式の悪魔的批判に反論する




マモン式 悪魔のお金と投資探求さんが、「ROKOHOUSE式 可変レバレッジドポートフォリオは危うい気がする。

というタイトルの記事にて、当サイトの可変レバレッジポートフォリオに対して懐疑的な記事を書いてらっしゃいました。

例えそれが批判であっても、取り上げていただけるのはありがたいことですので、お礼を申し上げさせていただきつつ、僕なりに反論させていただきます。

ROKOHOUSE式 可変レバレッジド・ポートフォリオ

2017年12月9日

まずはじめにお断りをしておくと、このポートフォリオをみて「レバレッジETFで高リターン狙いなんてリスク高いんじゃ・・・・。」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、僕は「レバレッジETFを用いることによりリターンを高めることができる!」という話をしているのではなくて、むしろ「リターンあたりのリスクを下げることができる!」と主張しているんですね。

これがシャープレシオを高く保ったままリスクを調整できるということの意味になるのですが、シャープレシオについては過去記事を見ていただければと思います。

金融工学を駆使したポートフォリオを紹介する(SPY-TLT、SPXL-TMF)

2017年12月6日

SPXLとTMFのボラティリティについて

はじめに、レバレッジETFの値動きが大きすぎて精神的にきついのではというお話ですが、これについては個別のETFではなくポートフォリオ全体で考える必要があります。

以下、悪魔の記事を抜粋します。

毎日株価指数が1%下落する、気分の悪い一週間があったとしましょう。

ここでS&P500指数が100ptだったとします。

1日目 2日目 3日目 4日目 5日目
S&P500 99 98.01 97.02 96.05 95.09

100ptから95.09pt(小数点以下、第2位までの場合)まで減少します。95ptとならないのは“前日から1%値下がりした場合”だからです。

SPYの日々の値動きに対して3倍に連動するSPXLを持っていた場合。
同じく100を基点として考えると

1日目 2日目 3日目 4日目 5日目
SPXL 97 94.09 91.26 88.52 85.87

S&P500指数が5%下がる場面で、SPXLは約14%下がることになります。

100万円分、SPXLを買っていたなら、86万円になる計算です。

 

その状況に耐えられますか?

なるほど最後の煽りがいかにも悪魔的です。

しかし、記事中の上記の例にならいまして、SPXLが14%下落した時、「リスク低」のポートフォリオにおいてはSPXLの比率は3割ですのでポートフォリオ全体の下落率は実質的にたったの4.2%です。

残りの7割に関してもほとんど値動きがないBNDが5割、株式と負の相関を持つTMFが2割ですから確率的には5%下落してしまう株式100%のポートフォリオよりも安全であるといえるわけです。

ポートフォリオ全体の値動き幅はむしろバックテストにおけるリスクの数値によって示されている通り、株式100%などのポートフォリオよりも平均的にマイルドなので精神的にはむしろ気が楽なはずです。

極端な話、BND99%、SPXL1%のポートフォリオを想像してみてください。

SPXL自体は9割下落することもありえるかもしれませんが、残りの99%はほとんど値動きしませんのでさすがにこれを株式100%よりもハイリスクであるという人はいないはずですから、ポートフォリオをリスクを考えるには個別のETFの値動きではなくてポートフォリオ全体の値動き幅をトラッキングしないといけませんよね。

実際に検証してみる

ではでは、実際にマモン式さんが出された例にもとづいて、その時のポートフォリオ全体の動きがどうだったか検証してみましょう。

2015年といえば、ROKOHOUSE式ポートフォリオがマイナスのリターンを記録した唯一の年でしたね。

2015年のSPXLの値動き

2015年の TMFの値動き

さて、たしかに並べてみると株式と債券の逆相関性というのは、完全には同期していないといえるかもしれません。

SPXLは34%、TMFは46%の下落幅を記録していますが、それではこの期間中にROKOHOUSE式ポートフォリオ(低リスク)全体がもっとも下落した瞬間の最大ドローダウン(最大時価総額時からの下落率)は何%だったのでしょうか?

答えは、リバランスを3ヶ月に1度した場合は-10.33%、リバランスを一度もしなかった場合は-11.43%です。

同年のVTIの最大ドローダウン率が-8.84%ですから、リバランスをするしないに関わらず、大した差はなかったといえます。

もしこれを大差だと主張するのでしたら、2011年のことも取り上げないとフェアじゃありません。

2011年の低リスクポートフォリオの最大ドローダウンは-3.61%だったのに対して、VTI単独では-17.58%でした。

悪魔的な言い方をするのであれば、-17.58%も下落しちゃって、

その状況に耐えられますか?

ということですね。

債券の今後の見通しについて

次に、債券価格が今後落ちるのではないか?というお話についてですが、これについてはなんとも言えません。

短期的な話をするのならば、落ちる可能性もあるし、上がる可能性もあるでしょう。

僕は一応ひととおり、マクロ経済を勉強してきているはずですが、今後どうなるかはさっぱりわかりません。

基本的には素人のブロガー(僕のことですよ)が無責任な見解を述べるべきではないというくらいに思っています。

ただ、それをお断りした上でいくつか予想している点を述べるとするならば、債券は長期においてはこれからも一定の利回りを持つ金融資産であるだろうことと、株式との逆相関傾向は持続性のあるものだろうということです。

以前、こんな記事を書いたことがありました。

中期投資家が債券を採用すべき理由──6:4の黄金比ポートフォリオ

2017年11月7日

1926-2016年の超長期データにおいても、株100%のポートフォリオはリスク19.77%に対して株60%債券40%のポートフォリオは12.49%です。

この逆相関の傾向というのは、ここ数十年の出来事ではなくて、90年間持続してきているということなんですね。

だから、確率的にいってTMFがSPXLのヘッジとしての役割を上手に果たしていく可能性はこれからも高いといえると思います。

それでも、どうしても債券はこれから危ないんだ!リスクが高いんだ!と主張するのであれば、ポートフォリオのBNDの代わりとしてキャッシュを取り入れるのも一つの手です。

とはいえ、キャッシュも常にインフレというリスクにさらされていることを忘れてはなりませんし、BNDを使ったポートフォリオより多少利回りも落ちるでしょう。

どのようなポートフォリオに対しても、無限に最悪を想定をすること自体は可能ですが、それでも僕たちは相対的にどれが安全なのかを選ばなきゃいけません。

この観点からして、50%がBNDで満たされた「低リスク」ポートフォリオは比較的低リスクであるということができると思います。

このポートフォリオは難易度が高いだろうか?

ちなみにこのポートフォリオを扱うのって、本当に難易度が高いでしょうか?

僕も、リバランスをしない人に扱われると困るなと思って「初心者向けではない」と書きましたが、正直いって3ヶ月に1回リバランスをするだけなので、誰でもできるのではと思ってたりします。

人は下落局面でメンタルを保てずに狼狽売りをする、というような話はよくありますけど、それは自分がどんな論理で株式投資をしているのかが腹に落ちてないからではないかと思います。

僕は8年位前にレーシックをしましたけど、怖いなあと思う心をなんとか奮い立たせてくれたのは、アメリカにおける施術の統計データでした。

一度納得できるルールを作ってしまえば、あとは株式投資なんて機械的に売買するだけですからね。

今回の言及について

というわけで、僕はこう思いますという形で反論させていただきましたが、マモンさんにはご丁寧にTwitterで「こんな記事を書かせていただきました」というようなご挨拶までいただいており、さらに記事中でも自分が納得できる記事ではなかったにも関わらず称賛のお言葉をいただいており、どうもありがとうございますとしか言葉がありません。

その意味では単にいい人であり、いうほど悪魔的な方ではなかったということができます。

僕としては、記事として取り上げていただけるのはそれが肯定でも批判でも歓迎ですし、それがもし僕が納得のいくような内容でなかったとしても、なぜ僕がそう思わないのかをここで説明することで、同じような疑問を持っていた読者に対する説明の機会を得ることができます。

というわけで、最後にもう一度リンクを貼らせていただきますが、言及記事をいただきまして、ありがとうございました。

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30代元システムエンジニア。 日本では経営学、アメリカで経済学や統計学などのビジネスを専攻。 趣味は株式投資からゲーム、音楽まで幅広く。 リンクフリーです、ご自由にどうぞ。