配当金を巡った議論は混迷をきわめ、巷ではお金持ちになりたければグロース株に投資するべきで、お金持ちになった後は優良配当銘柄に投資するべきというような残念な議論も横行しているようですが、端的に誤りです。
もし高配当銘柄が高収益をもたらすのであれば、お金のない人も高配当投資をすべきですし、逆にグロースのほうが儲かるのであればお金持ちになった後もグロースに投資すべきなのです。
高齢になった後に配当金を生活に回したいと思っている人も、単にもっとも儲かる株に投資しておいて毎月必要な額だけ売ればいいわけですし、そもそも高配当ETFなども基準価額は上がり続けるので死ぬまで持っていたら大金が残ってしまうので、どうしても毎月一定額を自動的に支給される形式が望ましいと考えるのであればそこは本来は毎月分配型のようなタコ足分配ファンドがその需要を埋める存在です(単に利便性の問題なのでやはり自分で株を売ればいい話ですが)。
「人それぞれにあった投資法がある」
というような物言いは、論理的には「その人にとって最適な投資法がその人にとっての最適な投資法である」というトートロジー(同語反復)で何か特別な新しい事実を意味するところではないのですが、とりあえず間違いではないので言っとけば安全ということで多用されます。
これについてもう少し深く考えてみましょう。
人それぞれが意味するもの
よくある議論で、リスクを取れる人はFANGのようなグロースに、そうでない人はディフェンシブ銘柄に投資しろというものがありますが、これは本当に正しいでしょうか。
仮にそれぞれのリスクとリターンを次のように仮定します。
グロース | ディフェンシブ | |
---|---|---|
リターン | 10 | 8 |
リスク | 10 | 5 |
この場合、グロースのほうがリスクもリターンも高くなっていますが、仮にディフェンシブ銘柄を2倍の量を買い付けたときは、リスクは同じでもリターンはグロースの1.6倍となります。
もちろん本来はレバレッジをかける場合はそのコストなども考慮する必要がありますが、このような考え方をすることで、資産運用ではシンプルにリスクとリターンの割合を重視すべきで、リスク許容度さえも量自体を変化させることで対応可能であることがわかります。
リスク許容度が低い人にとっても、ディフェンシブ銘柄を持つよりも高リターンなFANGを少量持ったほうが安全であるかもしれないわけです。
そしてここで真に問題なのは、投資家の性格とかではなく、FANGが本当にハイリスクの代わりにハイリターンをもたらすかです。
当然ながら、リスクとリターンは完全に予測できるものではないので、自分はリスク選好度が低いからなんとなくリスクが高そうな銘柄はやめておこうとか、そういった漠然とした判断というのはありえるし否定するつもりもありませんが、僕がここで主張したいことは高配当銘柄のリスクとリターンが優秀かどうかを議論しているときに、「人それぞれの状況によって違います」というのはズレてないか、ということです。
唯一の解は存在するか?
市場が完全に合理的だと仮定すると、インデックス投資が唯一の解ということになります。
しかし実際には市場には一定の偏りがあることは事実ですし(それを投資家が適切に判断し利ざやを取ることができるかは別問題として)、結局は前提としたデータに一つの解が紐付いているだけで、その意味では唯一絶対の解というのはひどく観念的な存在でもある気がしています。
でも、なんかちょっとロマンチックですよね。
RADWIMPSの歌とかにも出てきそうな気すらします。
「僕のポートフォリオがただしくて、他は全部まちがい。」
いつか言ってみたいセリフです。
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